2016 年 72 巻 4 号 p. I_310-I_316
マルチプルアーチダムは,2つ以上のアーチダムが連結された多重型アーチダムである.このようなダムの場合,一つひとつのダムが独立した構造体であると考えて個別的な評価を行えばよいのか,あるいは,複数のダムで一つの構造体であると考えて全体系の評価を行うべきかという問題が出てくる.そこで,単独ダムモデルと複合ダムモデルの2種類の解析モデルを設定し,三次元動的解析により,マルチプルアーチダムの地震時健全性の評価法について検討した.その結果,ダム堤体の地震時引張応力は,単独ダムモデルでは複合ダムモデルよりも小さくなった.したがって,全体系の評価に比して個別的な評価は危険サイドの評価になると考えられることから,精度・信頼性の高い評価を実施するためには複数のダムの動的相互影響を考慮した全体系の解析評価が必要であるとの考察結果を得た.