2017 年 73 巻 1 号 p. 98-113
我が国においては,1960年代にインフラ整備の最盛期を迎えてから既に50年以上経過し,多くの鋼橋が現時点での保有性能評価,将来予測などの必要な時期にさしかかってきている.特に立地場所が海岸線に近く,海塩粒子による腐食が顕著な環境においては,補修・補強,性能回復が重要課題となっており,経年鋼構造物の対策事例と有効対策に関する知見は有用である.そこで本論文では老朽化橋梁が抱える維持管理上の諸問題に対する知見の取得を目的として,98年間供用された後,2010年に新橋に引継がれたJR旧余部橋梁を対象に,腐食および飛来塩分調査結果を示し,地形および気象条件を反映した海塩輸送解析結果との比較検討を行ない,飛来塩分環境における鋼橋の腐食実態と塩分輸送解析モデルの腐食影響評価への適用性について明らかにしている.