2017 年 73 巻 2 号 p. 387-398
本研究では腐食損傷を有する鋼部材を対象として,さび層の生成や減肉等の損傷の程度を分析すべく,さび厚と残存板厚を同時に取得可能な分析手法について検討した.非破壊的に簡便な分析手法とするため渦電流試験に着目し,特に1~1000Hz程度の低周波渦電流を用い,鋼部材の表裏どちらか一方の面からの検査で腐食損傷状態を検出可能な分析手法の検討を行う.励磁波形として,一度に多くの板厚情報が取得可能なスイープ波と簡易な周波数ステップ波形を設計した.本研究では時間領域で周波数特性を把握可能なウェーブレット解析を導入し,指標として検出電圧とウェーブレット係数を用いる手法について検討した.数値シミュレーションと実験両面からの検討結果に基づいて鋼部材の腐食損傷状態分析手法を提案し提案手法の有効性について検討を行った.