2018 年 74 巻 4 号 p. I_724-I_730
2011年3月11日に発生した東日本大震災は,多くの下水道施設にも大きな被害を与え,下水管渠,人孔,処理場,ポンプ場等が被害を受けた.管路内に滞水,汚泥堆積が起こり,流下機能支障による汚水の溢水や,管路に浸水した津波によるマンホール蓋の飛散も確認された.本研究の目的は,石川県輪島市を対象地として,下水道事業業務継続計画BCPで未想定の,津波による下水道施設の被害の可能性を検討することである.標高および道路データを用いた地表面のモデル化,海岸線のモデル化と流入津波水位データの作成,人孔や管渠データを用いた下水道のモデル化を行い,地上・地下モデルを統合して浸水シミュレーションを行った.その結果,広範囲の管渠において,人孔内の水位が上昇している状態になり,マンホール蓋が飛散する可能性が高まることが示唆された.