日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
バランシング領域分割法の最適領域分割数の予測とその数値検証
山田 知典荻野 正雄吉村 忍
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 2009 巻 p. 20090014

詳細
抄録

有限要素法による複雑構造物の力学解析では,その構造物の複雑さに従い有限要素モデルの自由度が飛躍的に増加する.原子力施設のような大規模構造物においては,連成現象をモデル化せず構造問題に限った場合でも,その全体シミュレーションのため必要とされる自由度は数千万から数億自由度となり,並列計算機の利用が必要不可欠となる.反復型部分構造法はその並列効率の高さから大規模有限要素法解析の有効な並列計算手法として認知されている.反復型部分構造法の実装においては一般にローカルな部分領域の処理に直接法が用いられる.これは部分領域が比較的小自由度であり,また,反復型部分構造法のグローバルな反復回数分の求解処理が必要とされるためである.また,コースグリッド修正の実装においても同様な理由により直接法が用いられている.このため,計算効率は領域分割数に大きく依存することとなるが,これまでコースグリッド修正の計算コストを考慮した最適領域分割数の指針は明確に示されていない.特に,数百万自由度程度の規模では経験的に1部分領域あたり60~120要素という指針が示されていたが,その問題規模におけるコース問題は非常に小さく,コースグリッド修正にかかる計算コストは無視できるほどであった.しかし,近年行われている数千万から数億自由度の解析ではコースグリッド修正の計算コストが問題となることが分かってきたため新たな指針が必要となっている.そこで本研究ではBDD法を対象として,特に1,000万自由度以上の大規模問題における並列環境での最適領域分割数の指針をし,5,000万自由度規模の実構造物解析を行うことにより,その評価を行った.実複雑構造モデルを用いた最適領域分割数の予測と実測結果より、提案した最適領域分割数を用いた解析を行うことにより他の分割数に比べ高い計算効率が得られることを示した。

著者関連情報
© 2009 The Japan Society For Computational Engineering and Science
前の記事 次の記事
feedback
Top