日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:Autoinflammatory syndromeの新たなる展開と治療法の確立
CINCA症候群の臨床像とIL-1Raの効果・問題点
杉浦 弘松林 正
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2007 年 30 巻 2 号 p. 108-113

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抄録

  CINCA症候群は新生児期に発症する蕁麻疹様皮疹,中枢神経系病変,関節病変を特徴とする自己炎症性症候群である.検査所見は白血球の増加,貧血,CRPの上昇,ESRの亢進を示す.本症候群はCIAS1遺伝子とコードする蛋白cryopyrinが関連している.CIAS1遺伝子は単球,多核白血球,軟骨細胞で発現している.突然変異したcyropyrinはIL-1βの持続的な産生とNF-κBの活性化を導き,その結果慢性的な炎症反応が起こる.抗炎症作用を期待した様々な治療にも関わらず炎症は持続し,病変は進行性である.近年,CINCA症候群とその関連疾患であるMuckele-Wells症候群および家族性寒冷蕁麻疹の患者に遺伝子組換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rHuIL-1Ra, anakinra)が使用され,臨床症状の著明な改善の報告があり,CINCA症候群の慢性炎症の病態においてIL-1βが重要な役割を果たすことが示唆された.Anakinraによる重大な副作用の報告はない.病変は進行性で不可逆的であるため,CINCA症候群と診断したのであればanakinraによる治療を第一選択として開始するべきである.Anakinraによる治療は始まったばかりであり,副作用や長期予後に関して,更なる検討が必要である.

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© 2007 日本臨床免疫学会
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