日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
症例報告
アダリムマブ投与中にニューモシスチス肺炎を発症した関節リウマチ患者2例の報告
池内 秀和梅元 あずさ月田 真祐子櫻井 則之前嶋 明人黒岩 卓廣村 桂樹野島 美久
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 34 巻 5 号 p. 420-425

詳細
抄録

  近年各種TNF阻害薬が関節リウマチ(RA)の臨床に導入され,めざましい効果を挙げているが,感染症の合併も問題になっている.アダリムマブ(ADA)は新規に開発された完全ヒト型抗ヒトTNF抗体製剤である.今回我々はADA投与中にニューモシスチス肺炎(PCP)を発症したRAの2例を経験したので報告する.【症例1】66歳女性.RA罹病期間5ヶ月.ADA開始時,Steinbrockerの病期分類II,機能分類3,DAS28 (CRP3) 6.18.メトトレキサート(MTX) 6 mg/週,プレドニゾロン(PSL) 5 mg/日を併用していた.ADAは著効し28日後にはDAS28 (CRP3) 2.04になった.開始106日後,38℃台の発熱,咳嗽が出現し入院した.【症例2】62歳男性.RA罹病期間2年.既存の肺疾患なし.ADA開始時,Steinbrockerの病期分類II,機能分類3,DAS28 (CRP3) 6.15.MTX 8 mg/週,PSL 15 mg/日を併用していた.関節痛は改善傾向であったが,開始28日後,労作時息切れと倦怠感が出現し入院した.両症例とも胸部CTで間質性陰影を認め,β-D-グルカン高値であり,PCPと診断した.入院同日よりスルファメトキサゾール/トリメトプリム合剤を開始,70 Torr以下の低酸素血症があり高用量のPSLも併用した.症状は改善し,それぞれ第8,第16病日に退院した.喀痰Pneumocystis jirovecii DNAは両症例で陽性であり,β-D-グルカンと共に早期診断に有用であった.早期にST合剤を開始できたことも良好な予後につながったと考えられた.

著者関連情報
© 2011 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top