日本臨床免疫学会会誌
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総説
腸管慢性炎症性腸疾患におけるTreg, Th17, Th17/Th1, Th1 細胞の産生誘導,競合性,可塑性に関する総括的検討
筋野 智久金井 隆典
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2012 年 35 巻 5 号 p. 399-411

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抄録

  潰瘍性大腸炎およびクローン病に代表される炎症性腸疾患は,近年までCD4+ Tリンパ球における‘Th1/Th2サイトカインバランス'仮説に基づいて疾患が考えられてきた.近年,炎症を抑制する能力を持つ制御性T細胞,Th17細胞集団が登場し,最近ではIBDやIBDモデルを含むさまざまなヒト免疫疾患および動物モデルにおいて制御性T細胞の異常やTh17細胞の増加こそが真の病因ではないかと議論が広まっている.これまで,T細胞は最終的なeffector細胞になるとほかの細胞には変化しないとされていたが,T細胞間でも環境により表現型が変わることがわかり可塑性(Plasticity)という概念が構築されつつある.腸内細菌を含めた周辺の環境によりT細胞が誘導され,それぞれT細胞同士も周囲の環境によりPhenotypeを変えていることが判明しつつある.このような状況の中,炎症性腸疾患の原因が一つの因子でなく,多因子であり,T細胞の関与も複雑であることが判明してきている.これまで得られた結果をもとに炎症性腸疾患におけるT細胞の病態への関与についてT細胞の分化を踏まえて検討する.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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