抄録
免疫疾患における生物学的製剤の有効性は,標的分子の妥当性と投与量の十分性に規定される.従って,適切にデザインされた臨床試験の結果を詳細に解析すれば,疾患や病態における標的分子の関与の有無,重要な関与をする患者割合,そして標的分子の発現量分布などがある程度推定可能となり,医学の発展に大きく寄与する.腫瘍壊死因子(TNF)の阻害製剤は関節リウマチ(RA)と乾癬にほぼ同等の有効性を示すが,インターロイキン(IL)-17阻害製剤は多くのRA患者に有効性が低い一方で,乾癬における有効性はTNF阻害製剤を凌ぐ.またTNF阻害製剤のRAにおける有効性に製剤間格差は少ないが,抗体製剤と異なり受容体製剤であるエタネルセプトはクローン病における有効性を示せなかった.逆に結核リスクはTNF阻害製剤の中でエタネルセプトが低いとされる.さらに同一の製剤であっても病態によって一般的な有効用量が異なる.こうした臨床成績と製剤の作用機序を考え合わせることで病態を分子生物学的に解明し,病態非特異的免疫抑制・抗炎症療法から病態特異性の高い治療法へのシフトにより,臨床免疫学と免疫疾患治療を飛躍的に進歩させることが期待出来ると云えよう.