日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム1-3 IBD腸内細菌叢における酪酸高産生菌の減少
安藤 朗
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2016 年 39 巻 4 号 p. 289

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抄録

  潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)に代表に代表される炎症性腸疾患(IBD)は,遺伝的素因と関連した免疫異常が食事抗原や腸内細菌に過剰に応答し引き起こされると考えられている.さまざまな免疫関連遺伝子のノックアウトマウスに自然発症する慢性腸炎が無菌環境下では発症しないこと,炎症性腸疾患の病変が腸内細菌の豊富に存在する回腸末端から大腸に好発することなどから,腸内細菌が炎症性腸疾患の発症に深く関わっていることに疑う余地はない.炎症性腸疾患の腸内細菌叢の構成,機能の変化(dysbiosis)についてさまざまな検討があるが,腸内細菌の多くが難培養菌からなることから,さまざまな分子生物学的解析法が取り入れられて研究が進行してきた.それらの多くが,CD腸内細菌叢におけるClostridiumに代表される酪酸産生菌の減少を示している.嫌気性菌は食物繊維を発酵して酪酸,酢酸,プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を誘導するが,このうち酪酸にはヒストン脱アセチル化酵素阻害など多彩な作用が報告されている.我々の検討では,酪酸は,強力にNF-kBの活性化を阻害して抗炎症作用を発揮する.さらに,酪酸が制御性T細胞の誘導に係わることも明らかにされている.今回の発表では,これまで我々が報告してきたIBD腸内細菌叢における変化を酪酸産生菌の減少と結びつけてお示ししたい.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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