日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム3-2 新たな炎症性疾患バイオマーカーLRGの同定から開発まで
仲 哲治
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2016 年 39 巻 4 号 p. 298

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抄録

  これまで,関節リウマチ(RA)などの炎症性疾患の活動性評価に対する血清バイオマーカーとしてIL-6で発現が誘導されるCRPやESRなどの急性期タンパク質が用いられてきた.しかしながら,近年トシリズマブ等のIL-6を阻害する抗リウマチ薬が臨床応用され非常に良い治療効果を示している.これらIL-6の機能を阻害する抗リウマチ薬の投与下においては,CRPやESRなどのバイオマーカーの変動が直接的に抑止されるため,正確な疾患活動性評価が困難となる.また,潰瘍性大腸炎(UC)や全身性エリテマトーデス(SLE)などIL-6を介さない炎症性疾患も知られている.このような状況下,われわれが免疫疾患の新規マーカー探索を目的として行ったプロテオーム解析により,RA患者血清から同定した機能不明の糖タンパク質LRG(Leucine rich α2 glycoprotein)は,IL-6非依存性に炎症部位から誘導されると言う従来の炎症性バイオマーカーと異なる特性を持つ.この特性から,UCなどの炎症性腸疾患(IBD)において血清LRGは内視鏡的活動性と非常によく相関する(現在,IBDの血清バイオマーカーとしてPMDAへ製造販売承認申請中).今後,RA診療においてトシリズマブ等のIL-6を阻害する抗リウマチ薬投与下におけるバイオマーカーとして開発する予定である.本講演では,LRGのIBDバイオマーカーとしての開発に当たり,直面した問題点なども含めて報告する予定である.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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