日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
Rising Star Symposium
Rising Star Symposium1 CaMK4阻害によるTh17細胞の制御機構とナノリポジェルを用いたCD4陽性T細胞標的療法
古賀 智裕川上 純大友 耕太郎Tsokos George
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 39 巻 4 号 p. 309

詳細
抄録

  免疫の司令塔であるヘルパーT(Th)細胞のサブセットのうち,Th17細胞は関節リウマチ,乾癬性関節炎,全身性エリテマトーデス等の自己免疫疾患への関与が示唆されている.T細胞の活性化において,カルシウムの流入によってリン酸化される各種キナーゼはサイトカインの転写調節やT細胞の分化に重要な役割を有しており,カルシニューリン阻害剤はすでにループス腎炎や間質性肺炎等の自己免疫疾患において実用化されている.一方,カルシウム・カルモジュリン依存性のキナーゼも同様にT細胞による抗原提示によって活性化する酵素であるが,特にCaMK4(Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase IV)はTh17細胞への分化に直接影響を与える可能性が示唆されており,新たな治療ターゲットとして期待されている.だがCaMK4は脳や性腺組織に広く分布するため,臨床応用に際し目的の組織のみに到達するdelivery systemを構築する必要があり,ナノリポジェル(nLG)を用いたCD4陽性T細胞への供給システムの開発を試み,動物モデルでその効果を検討した.本シンポジウムでは,CD4陽性Th細胞の分化シグナルにかかわる分子の自己免疫疾患における重要性と,これらの分子(特にCaMK4)を標的としたドラッグデリバリーシステムを用いた新規治療法の可能性について概説する.

著者関連情報
© 2016 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top