日本臨床免疫学会会誌
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Rising Star Symposium
Rising Star Symposium2 シングルセル解析による関節リウマチの病態を担う線維芽細胞サブセットの同定
溝口 史高
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2016 年 39 巻 4 号 p. 310

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抄録

  線維芽細胞は細胞外基質の産生と分解を行うとともに,様々な細胞と相互作用し組織の恒常性維持を担っている.線維芽細胞の異常は線維化や慢性炎症を伴う病態に関与すると考えられ,新たな治療標的細胞の候補として注目をされている.

  関節リウマチ(RA)の病態において,線維芽細胞は炎症の増幅や関節破壊,他の免疫細胞や血管新生の制御を担っていると考えられている.線維芽細胞がこのような多彩な働きを持つことは,線維芽細胞は均一な細胞種ではなく,異なる機能を持つ複数のサブセットから構成される可能性を示唆する.しかしこれまで,線維芽細胞のサブセットを同定することやヒトの生体内での働きを調べることは様々な技術的制約もあり困難であった.

  今回我々はRAの滑膜組織より線維芽細胞を単離し,細胞表面分子と遺伝子の発現を1細胞レベルで解析し,その発現パターンに基づき細胞を分類することにより,線維芽細胞が異なった機能を持つ複数のサブセットから構成されることを見出した.RAでは特定のサイトカインやプロテアーゼを高発現するサブセットの割合が増加しており,RAの病態に関与するサブセットと考えられた.このRA関連サブセットの制御機構を明らかにすることにより,新たな治療戦略の開発へとつながることが期待される.本手法はこれまで病態の解明が困難であった疾患において,病的な細胞サブセットを同定するために有用と考えられる.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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