日本臨床免疫学会会誌
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Rising Star Symposium
Rising Star Symposium4 TCR片鎖遺伝子導入による腫瘍認識高親和性T細胞の作製
中津川 宗秀Butler Marcus O.鳥越 俊彦Hirano Naoto
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2016 年 39 巻 4 号 p. 312

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抄録

  TCR遺伝子導入養子免疫治療は,実行可能かつ有望ながん免疫治療である.しかしながら胸腺において腫瘍抗原を含む自己抗原に対してネガティブセレクションを受けた末梢血T細胞から高親和性かつ腫瘍を認識するTCRを単離するのは容易ではない.我々は腫瘍認識高親和性TCRを効率よく単離する新規方法を開発した.末梢血T細胞にがん抗原特異的TCRα鎖或いはβ鎖のみ(TCR片鎖)を遺伝子導入すると内因性に発現するTCRとペアリングし,胸腺セレクションを経験しないTCRレパトアが作製される.その胸腺非選択性TCRレパトアには高親和性TCRが含まれ,抗原特異的に増幅することで腫瘍抗原特異的高親和性TCRを単離することが可能となる.この方法によって末梢血CD8+T細胞のみならず,CD4+T細胞からもClass I拘束性高親和性TCRを単離することが可能であった.それら高親和性TCR導入T細胞はCD8分子非依存性に腫瘍を認識した.胸腺セレクションを受けたTCRは,通常ペプチド/MHC複合体に対して親和性は低く,マルチマー化していないペプチド/MHCモノマーでは染色されない.驚くべきことにTCR片鎖導入CD4+T細胞からはペプチド/MHCモノマーで染色可能な極めて高い親和性を有するTCRが単離可能であった.ただしCD4+T細胞から単離されたTCRは標的ペプチドと類似配列のペプチドに対する交差反応性が高い傾向にあり,臨床応用に関しては十分注意してTCRを選択する必要がある.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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