2016 年 39 巻 4 号 p. 316
自己免疫疾患で産生される自己抗体は,臓器傷害を初めとする病態形成に重要だが,この抗体産生を抑制する生理的なメカニズムは不明である.抗体産生を抑制する活性を持つサイトカインとしてはこれまで,TGF-beta1が知られているが,線維化誘導能があることや,条件により免疫刺激活性を発揮することが治療応用のハードルとなっている.我々はこれまでにIL-10を高産生しアナジーと関連する転写因子Egr2を発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞(LAG3Treg)を同定したが,このLAG3TregがTGF-beta3を産生して液性免疫応答を抑制することを見出した.今回TGF-beta3とTGF-beta1のB細胞に対する抑制能を解析したところ,TLR刺激を受けたB細胞に対してはTGF-beta3とTGF-beta1それぞれ単独では抑制できないことが明らかとなった.LAG3TregはTGF-beta3だけでなくIL-10も産生するため,TGF-betaとIL-10を併用してみたところ,TLR刺激を受けたB細胞の試験管内,生体内の機能の抑制が可能であった.最近の解析により,TGF-betaとIL-10によるB細胞抑制に関連する細胞内シグナルが明らかになりつつある.このような解析により自己抗体産生の抑制機構を解明することで,新たな治療戦略の土台になることが期待される.