日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディー3-2 T細胞 腸内細菌と関節炎におけるT細胞の役割
前田 悠一
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2016 年 39 巻 4 号 p. 324

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抄録

  我々は,関節リウマチ(RA)発症の環境要因の一つとして,腸内細菌叢の変化に着目して研究を行った.まず,早期RA患者と健常者の腸内細菌叢をパイロシークエンス法にて比較したところ,RA患者の一部にPrevotellaという嫌気性菌の増加を認めた.次に,この腸内細菌叢の変化がどのように関節炎発症に関与するかを調べるため,T細胞に異常のあるSKGマウスを無菌化し,Prevotellaの多いRA患者と,健常者の腸内細菌叢を定着させ,関節炎を誘導すると,RA患者の腸内細菌を定着したマウス(RA-SKGマウス)に重篤な関節炎を認め,所属リンパ節及び大腸のTh17細胞数の増加を認めた.RA-SKGマウスの所属リンパ節及び大腸におけるT細胞と関節炎の抗原(RPL23A)とを共培養したところ,IL-17Aを高産生した.P. copriの死菌を樹状細胞と共培養すると,IL-6,IL-23の産生を認めた.最後に,腸管でできたT細胞が重要かどうかを調べるため,大腸と脾臓のCD4陽性T細胞を抗生剤投与下の免疫不全マウスに移入すると,大腸のT細胞の移入で早期に関節炎を発症した.これらの結果より,SKGマウスのT細胞は,P. copriが優勢となったRA患者特有の腸内細菌叢により腸管において活性化し,Th17細胞を誘導し,そのT細胞が関節局所に遊走する事により,重篤な関節炎の発症に寄与すると考えられた.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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