日本臨床免疫学会会誌
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総説
皮膚内在性幹細胞と創傷治癒
岩田 洋平赤松 浩彦長谷部 祐一長谷川 靖司杉浦 一充
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2017 年 40 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

  創傷治癒は人体が外界からの脅威を防御する上で,重要なプロセスである.骨髄幹細胞や脂肪組織由来幹細胞が新たな治療ターゲットとして近年期待が高まっているが,より有用で新しい治療薬の開発のためには皮膚内在性幹細胞の創傷治癒における役割の詳細な解明が不可欠である.p75NTR(CD271)は皮膚幹細胞のマーカーとして知られており,マウス皮膚創傷治癒モデルを用いて,表皮および真皮幹細胞の動態を免疫染色,Realtime RT-PCR,FACSでの解析を行ったところ,表皮および真皮のCD271+細胞は創傷治癒過程の進行に伴い増殖し,CD271細胞と比較すると様々なサイトカイン,細胞成長因子を産生することで創傷治癒に重要な役割を果たしていることが示唆された.実際に慢性潰瘍患者の創傷部の皮膚では,表皮・真皮CD271+細胞が健常人と比較して著明に減少していることが明らかになった.本総説では,皮膚内在性幹細胞の創傷治癒過程での役割に焦点を当て,概説する.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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