日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム2 免疫疾患の新たな治療開発への方向性
JS2-3 代謝制御剤による膠原病治療の可能性
森信 暁雄
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2017 年 40 巻 4 号 p. 259b

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抄録

  細胞は解糖系,脂肪酸β酸化などの代謝経路によりエネルギーを産生しているが,免疫細胞の代謝と機能は密接に関連していることが知られている.例えば,Th17細胞やM1マクロファージなどの炎症性細胞は解糖系を中心とした代謝であるが,Treg細胞やM2マクロファージなどの抑制性細胞はβ酸化を中心とした代謝となっている.一方で,RAを中心としたリウマチ性疾患における代謝状態の研究が進展し,病態との関連が注目されている.私たちは,炎症性疾患を代謝を制御することにより制御できるか否かを検討するために,代謝制御剤の関節炎モデルマウスに対する効果を検討した.解糖系制御剤の投与によりSKGマウスの関節炎は軽減した.治療剤投与により脾臓のTreg細胞は増加し,活性化樹状細胞は減少していた.すなわち解糖系阻害は免疫抑制細胞を増加させ,関節炎を抑制した.関節炎においては滑膜線維芽細胞が重要な役割を果たしているため,次にRA患者滑膜細胞における代謝を検討した.滑膜線維芽細胞の増殖はブドウ糖,およびグルタミンに依存していた.グルタミン代謝の阻害剤は滑膜細胞の増殖を抑制し,SKGマウス関節炎を軽減したことより,グルタミン代謝は関節炎に関与していることが示された.代謝制御によるリウマチ性疾患の可能性は示したが,多くの問題があることも事実である.代謝制御剤の今後の可能性について考察する.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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