日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム2 免疫疾患の新たな治療開発への方向性
JS2-4 自己免疫疾患の新たな治療法開発を目指して
大木 伸司
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2017 年 40 巻 4 号 p. 260a

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抄録

  多発性硬化症(MS)には,Th17細胞などに依存する自己免疫病態を呈する再発寛解型MSに加えて,二次進行型MSなどの持続進行型病態が存在する.私たちはそれぞれの病態の形成に関わるヘルパーT細胞として,NR4A2依存性Th細胞とEomes陽性Th細胞の機能解析を進めた.さらに,いまだ有効な治療法がない二次進行型MSに対する新規治療法開発に向けた治療標的分子の探索から,Eomes陽性Th細胞が示す細胞障害性T細胞様の表現系に関連する複数の候補分子を同定した.またEomes陽性Th細胞の表面分子を標的とした抗体治療の有効性を明らかにし,現在さらなる治療標的分子の探索を進めている.再発寛解型病態から進行型病態への移行を抑制する新たな予防的治療法開発を目指した取り組みとして,中枢神経内でのEomes陽性Th細胞の生成過程を詳細に解析し,慢性炎症環境下の抗原提示細胞が選択的に産生するプロラクチンが,Eomes誘導因子として機能することを見出した.プロラクチン阻害剤のin vivo投与により病態が有意に改善したことから,進行型病態への移行を予防するための新たな戦略として,プロラクチン阻害の有用性を明らかにした.自己免疫疾患の病態形成とNR4A2の関係はいまだ不明な点が多いため,引き続き解析を進めている.最近,NR4A2が自己免疫応答の選択的な制御分子であることを示唆するデータを得たので,あわせて紹介したいと考えている.

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