主催: 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
マウスモデルは多くの場合、自己免疫疾患の病態解明に有用な知見を供する。しかし、マウスとヒトという種の違いに基づく相違点を注意深く認識する必要がある。我々は、自己抗原ノックアウト(KO)マウスが欠失した抗原分子に対する免疫寛容が成立していないことを利用し、自己抗原KOマウスのリンパ球をRag2-/-マウスに移植することにより、自己免疫モデルマウスの作成に成功している。同法により、表皮細胞間接着因子であるデスモグレイン3(Dsg3)KOマウスの脾細胞移植により、皮膚・粘膜を標的とする天疱瘡モデルマウスが作成された。また、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)KOマウスの脾細胞移植により、糸球体腎炎、血管炎を誘導することが示され、MPO-ANCAによるモデルマウスも作成されている。作成されたモデルマウスを用いて、既にヒトに使用されている種々の免疫抑制剤の効果を評価してみると、ヒトでの効果と必ずしも一致しない薬剤も認められる。本講演では、自己免疫疾患マウスモデルによる解析を行いつつ、自己免疫疾患患者の治療現場に身を置く立場から、マウスとヒトの違いを乗り越えて、ヒト自己免疫疾患克服のためのアプローチについて論じたい。