主催: 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
関節リウマチ(RA)滑膜では、リンパ球やマクロファージ活性化により炎症性サイトカインが産生されている。これらで刺激された滑膜線維芽細胞は増殖してパンヌスを形成し、組織破壊酵素を産生したり破骨細胞を活性化して関節破壊をきたす。現在の治療法は、生物学製剤も含めて炎症抑制を狙うものばかりである。これらの治療効果は大きいものの、寛解導入例は少なく、過度の免疫抑制も問題となっている。そこで、我々は、滑膜線維芽細胞の増殖阻止も新しい治療戦略となると考え、細胞増殖にかかわる分子の中でも、細胞増殖を抑制するサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CDKI)p16INK4aとp21Cip1に注目し、RAモデルにこれらの関節内遺伝子治療を行い著効することを示した。 遺伝子治療の詳細な効果発現機序の解析からは、CDKIがCDK抑制依存的および非依存的に炎症や組織破壊にかかわる分子の発現を抑制することも明らかとなった。すなわち、p21Cip1がJNKに結合しこれを不活化するばかりでなく、CDKのうちp16INK4aが抑制するCDK4活性の抑制でも線維芽細胞からのサイトカインカインやMMP-3産生が抑制され、マクロファージからのサイトカイン産生も抑制された。また、破骨細胞の分化も抑制された。このように、細胞周期分子としてしか知られていなかったCDK4は細胞周期ばかりではなく、関節破壊にかかわる種々の局面を支配していた。そこで、低分子CDK阻害薬を新規合成してRA動物モデルに全身投与したところ、リンパ球抑制をきたさずに関節炎と関節破壊を抑制することができた。人への応用に向けて阻害薬開発を進める予定である。