日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第39回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S1-5
会議情報

合同シンポジウム1 免疫疾患の治療の進歩
がん領域における抗体療法の進歩-抗CCR4抗体を中心に
*上田 龍三石田 高司
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

2011年は患者会の働きもあり、HTLV-1関連疾患の予防、研究にとって行政が大きく動いた年となった。予防に関してはHTLV-1抗体検査を妊婦検診に追加したこと、HTLV-1関連疾患に対して疫学的な実態把握、病態解明、発症の予防、新規医薬品の開発、診断・治療法の開発・確立等にわたる戦略的な研究を支援する総合的な対策を講じたことである。  我々は治療困難なT細胞リンパ腫の研究の延長線で、ケモカインレセプターCCR4がATLや末梢性T細胞リンパ腫に高頻度に発現している事、CCR4発現が臨床上では免疫不全に関与し、独立した予後因子となりえる事等を見出した。in vitro, in vivoにおける前臨床研究において、抗CCR4抗体がCCR4発現Tリンパ腫、特にATLに有効な治療手段となりえる実験成果に基づき、企業と臨床治療研究を推進してきた。日本で開発した癌に対する抗体療法として、日本で初めてヒトに投与し(First in Human;臨床第1相試験)、安全性、有効性が評価でき、更に、昨年登録終了した第二相試験でも26例中13例に奏効(奏効率50%)と、期待を上回る治療効果が得られた。現在、希少医薬品指定を受け、再発・再燃CCR4陽性ATLに対する承認申請中である。初発ATLに対する化学療法との併用療法の治験の登録も本年6月に終了しており、標準的治療法の確立していないATLの新規治療法として期待が寄せられている。  我々の経験から本邦でのトランスレーショナル・リサーチ(TR)の問題点、世界のがんに対する抗体療法の趨勢などを論じたい。

著者関連情報
© 2011 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top