抄録
【目的】高脂血症・高血糖症改善作用を有するバナジウム水のS-180担癌マウスとHeLa
S3培養細胞に対する作用効果の有無に関する検討。
【検討事項】1)バナジウム水(VW)の抗腫瘍作用:ICR系5週齢雄マウス鼠頸部皮下に肉腫
細胞(106コ)移植後、VW水(18.4μl/0.2ml)を35日間連日1回経口投与。肥大肉腫面積と摘出肉腫重量測定。2)免疫機能賦活化能:抗酸化作用の計測とリンパ球・多形核白血球測定(LP比)。3)HeLa S-3細胞増殖抑制・傷害作用:培養細胞数の経時的推移と細胞形態観察。4)VW水の個体及び細胞レベルでの毒性試験:
【結果】1)抗腫瘍作用:S-180細胞皮下移植後、5週目の肥大肉腫面積及び肉腫重量は著しく抑制された(p<0.05)。2)免疫賦活化作用:VW水の抗酸化作用とL/P活性化の対照群と実験群間での有意差はみられなかった。3)HeLa S3培養細胞増殖抑制作用・障害作用:対照群に比べ実験群での細胞増殖は顕著に抑制され、細胞の形態変化も顕著であった(p<0.05)。4)毒性作用:急性・亜急性毒性は皆無であった。
【結論】以上の結果から、VW水の肉腫形成抑制作用は免疫系機能の賦活化によるものではなく、移植時肉腫細胞あるいは培養癌細胞の細胞膜変異(水分浸透圧、酸・塩基平衡維持・Na/Kポンプなど)に伴う細胞の自己崩壊による直接的作用に起因することが示唆された。