日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第39回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: LS-3
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ランチタイム教育講演
自然免疫系と獲得免疫系を繋ぐNKT細胞—新規治療法のターゲット
*谷口 克
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抄録

NKT細胞は、自然免疫系と獲得免疫系を繋ぐシステムで、がんや病原体に対する防御免疫および自己免疫発症制御や移植免疫維持などの免疫制御という相対する免疫反応の制御に関わる。防御反応においては、NKT細胞は活性化に伴って産生されるIFNgによりアジュバント作用を発揮し、強い抗腫瘍効果を出す。NKT細胞のアジュバント作用は、1)未熟樹状細胞と反応し、成熟樹状細胞へ変化させる事で免疫不全を改善し、2)NK細胞の活性化により、MHC分子を失ったがん細胞を殺し、3)CD8キラーT 細胞を活性化し、MHC分子を発現しているがん細胞を殺すため、強い抗腫瘍効果が期待できる。
これまでに標準治療後の平均余命が7−8カ月といわれる17名の進行肺がん患者(第_III_B、_IV_期)に対して、第_I_・_II_相の臨床試験を試行し、初回治療だけしか行っていないにも関わらず、60%の患者の生存期間の中央値は、31.9カ月(残りの40%は9.7ヶ月)であった。さらに、治療効果の高かった患者は、生体内に存在するNKT細胞の数が多いこと、IFNg産生が高いことも明らかとなったこ。
の治療法は、極めて効果が高い治療法であるとはいえ、適応できるのは全体の1/3にすぎず、3分の2の患者は体内に存在するNKT細胞の数が少ないため、効果が低い状況となっている。患者から採取したNKT細胞からiPS細胞を作製し、そのiPS細胞から産生したNKT細胞を体に戻すことで、治療効果の大きな改善が期待できる。

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© 2011 日本臨床免疫学会
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