関節リウマチ(RA)は全世界で有病率0.5-1%の慢性炎症性関節炎であり、RA発症の約50%を遺伝因子で説明可能と考えられている。HLA-DRB1は全人種共通の最も強いRA疾患感受性遺伝因子であるが、RA全遺伝因子の1/3-1/2ほどの影響に留まる。非HLAのRA疾患感受性遺伝因子は全ゲノム関連解析を中心に30以上が発見・報告されてきたが、人種特異的なものも多く、一つ一つの寄与率も小さい。関連が示された遺伝因子の機能的役割は不明なものが多い一方で、一部の因子に関しては転写における役割やタンパクのアミノ酸置換およびそれがもたらすタンパクの機能的変化、下流のシグナル経路における影響などが示されている。また、近年、HLA-DRB1遺伝子やPADI4,PTPN22に関しては遺伝因子としての役割のほかに環境因子との関わりによる病態への関与が明らかになってきた。また、これまでのRA遺伝子解析によって、RAの病型、特にRA疾患特異性の高い抗環状化シトルリン化ペプチド抗体の有無で分けられた二群の遺伝的背景が異なることも明らかになってきた。
このワークショップでは、RAの遺伝因子研究の歴史と現状、これまでの遺伝因子の機能解析がもたらしたRA病態解明における進展、それらの将来の展望を概説する。