臨床神経生理学
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原著
本邦における脳磁図検査施行の実態とその問題点
白石 秀明尾﨑 勇井口 義信石井 良平鎌田 恭輔亀山 茂樹露口 尚弘中里 信和長峯 隆平田 雅之湯本 真人渡辺 裕貴橋本 勲
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2012 年 40 巻 3 号 p. 119-130

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抄録

脳磁図検査を施行している国内36施設に対して, 脳磁図検査がどのような症例に対して行われ, どのような検査が行われているのかに関して, 平成21年5月に, 郵送による質問紙調査を行った。また, これらの施設で, 検査を施行している医師, 検査技師が施行上, あるいは財政的にどんな問題に直面しているのかに関しても質問した。24施設 (回答率67%) より回答を得た。年間150~200症例の検査を施行している施設が多い一方, 50例以下の施設も多くあった。脳磁図検査を依頼された患者の臨床診断では, てんかんと脳腫瘍がほぼ半数を占め, 認知症, 脳血管障害, 変性疾患がこれに次いでいた。患者の年齢層は幅広かったが, 60歳以上の症例が16%に達していた。脳神経外科医と精神科医が脳磁図の記録と解析の主体を担っており, 約半数の施設では専任臨床検査技師が配置されていなかった。脳磁図記録のプロトコルには, 自発脳磁場解析, 体性感覚誘発脳磁場, 聴覚誘発脳磁場, 視覚誘発脳磁場, 運動関連脳磁場, 言語優位半球同定が含まれていた。多くの施設で, てんかん患者の自発脳磁場解析の為にてんかん性棘波の自動解析ソフトウエアの開発が望まれていた。年間の維持経費は500~2,000万円の施設が多い一方, 83%の施設で赤字を計上していた。健康保険による脳磁図検査の適応拡大が, これらの負債の軽減に必要であることが示唆された。

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© 2012 一般社団法人 日本臨床神経生理学会
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