抄録
経頭蓋的磁気刺激 (TMS) による運動誘発電位 (Motor evoked potential: MEP) の振幅を皮質の興奮性の指標として条件刺激の影響を調べることができるが, 運動野二連発経頭蓋磁気刺激法では, 条件刺激を運動野に与えることで運動野内の興奮性調節機構を検出する。Kujirai methodでは条件刺激を閾値以下にして, 試験刺激に1–5 ms先行させると抑制が生じShort-interval intracortical inhibition (SICI) と呼ばれる。これは皮質内のGABA性介在神経の機能を反映するとして, 近年では皮質内抑制の指標として用いられている。また, 試験刺激後に閾値以下強度のTMSを加えると, 約1.5 ms, 3.0 ms, 4.5 msをピークとした促通がみられる。これは, 磁気刺激により誘発されるI-waveの間隔と等しいことから, I-wave facilitationもしくはShort-interval intracortical facilitation (SICF) と呼ばれる。SICFの機序は二発の刺激により生じた促通性介在神経におけるEPSP時間的加重によると考えられている。SICIもSICFも皮質レベルの調節機能であり, 神経疾患や様々な条件下での皮質興奮性の変化を捉え機序を解明するための指標となる。