2013 年 41 巻 1 号 p. 7-17
一般的に, 脳内の電気生理学的活動源の挙動や特性を脳電磁図の測定信号から求めようとする際には, ある逆問題解法を用いて信号源の推定を一旦行い, 次に, 得られた推定信号源に対して時間–周波数解析や相互相関解析などを行っている。したがって, 信号源の推定精度がその後の解析結果を左右してしまうこととなる。我々の先行報告では, 目的とする信号の特性を有する信号源を選択的に推定する手法を提案し, その適用例として, 異なる周波数で互いに相関を示す複数の脳内活動源の推定を取り上げ, シミュレーションデータを用いて, 具体的な解析と推定の手順, およびその結果を示した。本報告では, 単一指タッピング時の脳電図および筋電図の実測データに対して, 我々の提案する手法により脳内信号源の推定を行い, その結果を解剖学的知見や従来手法の一つである事象関連脱同期/同期解析と照らし合わせて妥当性を評価した。