2021 年 49 巻 3 号 p. 158-161
精神科領域の疾患には, 身体的要因が大きいものと心理的要因が大きいものがある。身体的要因が大きい疾患は脳波異常を呈すことが多く, 主に心理的要因による疾患は原則として脳波異常を来さない。身体的要因が大きい疾患である, 単純ヘルペス脳炎や抗NMDA受容体脳炎等に伴う器質性精神障害では, 幻覚妄想状態を呈し他の精神疾患との鑑別が問題となるが, 高率に脳波異常を呈すため, 脳波がスクリーニングとして有用である。一方, 主に心理的な要因による解離性・転換性障害や心因性非てんかん性発作もまた多彩な精神症状を呈すが, こちらは原則として脳波異常を来さないことが鑑別の手がかりとなる。また, いまだ詳細な病態が解明されていない統合失調症などの内因性疾患については, 脳波異常の頻度が比較的高いことが知られているものの, 臨床における有用性は乏しい。一方, ミスマッチ陰性電位 (MMN) などの事象関連電位の分野において, これらに対する病態解明やバイオマーカー探求の試みが行われている。