2024 年 52 巻 3 号 p. 206-211
経頭蓋磁気刺激 (TMS) を複雑なパターンで反復刺激するpatterned rTMSは, 非侵襲的にヒトの大脳皮質に神経可塑性を誘導できる。この非侵襲的脳刺激法はニューロモデュレーションの手法として臨床応用が期待され, 特に作業療法と併用することで脳卒中患者の麻痺側上肢機能が改善した。しかし, そのrTMSの効果は一過性で, 個体間での効果のバラツキが問題となる。この個体間変動の一因として, 大脳皮質の神経振動が関連する可能性がある。本稿では神経振動に対して同調効果のある経頭蓋交流電気刺激 (tACS) を用いた新たな刺激手法を紹介し, そのメカニズムを考察する。具体的には, 神経振動をtACSで修飾し, 最適な時間窓でpatterned rTMSを組合せることで刺激の効果が持続かつ安定化する。今後, この新たなニューロモデュレーションの手法が確立し, 作業療法の場面に応用されることを期待する。