人工知能 (AI) およびビッグデータ解析の進展により, 脳波 (EEG) を用いた神経疾患診断の研究は急速に発展している。EEGはミリ秒単位の時間分解能を有し, 神経活動のダイナミクスを直接反映するうえ, 非侵襲・低コスト・可搬性に優れるため, 実臨床で反復的に用いうる神経生理学的バイオマーカーとして重要である。近年は, てんかんや認知症を中心に, 大規模脳波データへ深層学習を適用することで高精度な自動識別が可能となってきた。一方で, 深層学習は高い識別性能を示す反面, どの脳波特徴が診断に寄与したのかが不透明になりやすく, 病態理解や臨床説明可能性の面で課題を残す。とくにアルツハイマー病 (AD) の疾患修飾薬 (disease-modifying therapies: DMTs) の時代には, アミロイド病理を有する軽度認知障害 (MCI) 患者の低侵襲なスクリーニングとして高精度で説明可能性の高い脳波診断技術が求められている。本稿では, AIを用いた脳波解析の原理と神経疾患診断への応用を概説した上で, 認知症領域における深層学習と位相振幅結合 (phase-amplitude coupling: PAC) を対比し, 高性能と説明可能性の補完関係を議論する。さらに, BIOT, LaBraM, NeuroLMなどの基盤モデル, およびデジタル脳・デジタルツインの考え方を取り込み, 今後の脳波診断が「高精度化」だけでなく「解釈可能化」と「個別化医療」へ向かう方向性について論じる。