Cardiovascular Anesthesia
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講座
LVADの麻酔―LVAD装着後を中心に
蜷川 純
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2016 年 20 巻 1 号 p. 13-16

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抄録

 本邦における心臓移植と補助人工心臓(ventricular assist device : VAD)を取り巻く状況は,ここ数年で大きく変化している。2010年には改正臓器移植法が施行され,心臓移植件数はそれまでと比べて飛躍的に増加した。また,定常流式植込型VADが本邦で初めて保険償還されて以降,植込型VADの件数は着々と増加しており,本邦の心臓移植までのブリッジ(bridge to transplantation : BTT)としてのVAD治療の主流は,それまでの拍動流式体外設置型から定常流式植込型へと完全にシフトしたと言える。しかし,現況では植込型VADの適応はBTTに限定されており,心原性ショックでは適応外となる。従って,移植登録の申請中に血行動態が破綻した場合や,急性心筋梗塞,劇症型心筋炎,産褥型心筋症などで急激な経過を辿った重症心不全状態においては,従来の体外設置型VADを使用することになり,植込型が主流となった現在でも体外設置型VADの出番は決して無くなっていない。また,小児用VADとして「2015年に保険償還された」EXCOR(Berlin Heart社)は拍動流式体外設置型である。即ち,VADの麻酔管理に携わる麻酔科医は,拍動流式体外設置型と定常流式植込型,両方のVADの特性を理解しておく必要がある。一方,改正臓器移植法の施行後,心臓移植件数とともに心臓移植のレシピエント登録も増加しており,LVAD装着から心臓移植までの待機期間の長期化は依然として解決されておらず,平均待機期間は2∼3年である。このような現状においては,LVAD装着中に非心臓手術を受ける症例が今後増加していく可能性もある。このような本邦での背景を踏まえつつ,本稿ではVAD装着後の麻酔管理に関して概説する。

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© 2016 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
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