2017 年 21 巻 1 号 p. 101-104
症例は60歳女性。胸腹部大動脈瘤の診断で,人工心肺下に腹部4分枝再建,Y型人工血管置換術,右内腸骨動脈再建術が行われた。手術中循環動態は安定していた。術後ICUに入室直後,急激な血圧低下から無脈性電気活動(PEA)となり,胸骨圧迫を開始しアドレナリン静注で血圧が回復した。経食道心エコー検査を施行したところ,心嚢液の貯留と上行大動脈から下行大動脈に解離を認めた。逆行性解離が生じたと判断し直ちに手術室に戻り,上行部分弓部大動脈人工血管置換術が施行された。術直後の循環破綻に対し,経食道心エコー検査は有効であった。