2022 年 26 巻 1 号 p. 65-69
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者における心大血管手術は周術期の出血対策が特に必要となる。本症例は手術6週間前からプレドニゾロン10 mg,エルトロンボパグ12.5 mgの内服加療を行い,血小板数は2.8万/μlから12.7万/μlまで増加した。そのため,γグロブリン療法や術前の血小板輸血を施行しなかった。また体外循環を避けるために心拍動下冠動脈バイパス術を選択した。術中は濃厚血小板20 Uを輸血し良好な止血を得ることができたが,術後にグラフト閉塞を起こした。ITP患者への冠動脈バイパス術では,血小板数増加の手段としてトロンボポエチン受容体作動薬も考慮し得るが,血栓性合併症の報告があり使用には注意が必要である。