比較眼科研究
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原著
イヌの屈折検査におけるハンディオートレフラクトメーターの信頼性、および調節麻痺の影響
伊藤 良樹萩原 雅俊前原 誠也泉澤 康晴
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2011 年 30 巻 p. 3-10

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抄録

獣医眼科学における屈折検査にはレチノスコープが主に用いられており、オートレフラクトメーターを用いた屈折検査の報告はほとんど無い。本研究では、イヌの眼に対するハンディオートレフラクトメーターの信頼性、および調節麻痺が屈折検査結果に与える影響について検討した。
レチノスコープとオートレフラクトメーター(Retinomax K-plus; Nikon)を用い、23頭46眼の実験ビーグルの眼屈折度(球面度数)を調節麻痺剤の点眼前後に測定した。両測定法の一致性の検討にはStudent's t-test、ピアソンの相関係数、Bland-Altman解析を用い、調節麻痺の影響の検討にはStudent's t-testを用いた。
両測定法で得られた眼屈折度では、調節麻痺前後でオートレフラクトメーターによる眼屈折度が有意に低い値を示し、検影法による屈折度に比べて近視化していた。また調節麻痺前の屈折検査では、両測定法による眼屈折度に弱い相関がみられた。Bland-Altman解析において両測定法から得られたイヌの眼屈折度の差が臨床的許容範囲(±0.5 D)に含まれていたのは、調節麻痺前が45.7%、調節麻痺後が52.2%であり、オートレフラクトメーターを用いた屈折検査は検影法の代替法とはならないと評価された。また、両測定法で調節麻痺後の眼屈折度が有意に高い値を示し、調節麻痺前の眼屈折度に比べて遠視化していた。
本研究より、ハンディオートレフラクトメーター(Retinomax K-plus)によるイヌの屈折検査を実施する際には、その正確性に注意を払う必要があることが明らかとなった。また、調節による眼屈折度の変化を抑えるために調節麻痺剤を使用してから屈折検査を行うことが望ましいと考えられた。

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© 2011 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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