2021 年 5 巻 s1 号 p. s59-s62
アーカイブ構築に関する構想力は、常にその時代ごとの技術水準に規定されている。本報告の目的は、アーカイブの歴史を、テクノロジーからの影響や相互作用という視点で読み直すことである。特にアナログ的な「複製技術」の進展が、近代以降の日本で、文書資料を中心とするアーカイブ構築活動をいかに支えてきたかを考察する。漢字仮名まじりで必要文字数が多い日本語文書の複製においては、明治以降、ゼリーグラフや謄写版など「イメージを複製するテクノロジー」が主流になるという、世界的に特異な展開があった。そこから青写真、青焼き、PPC、マイクロフィルムなどへと至る20世紀末までの技術の変遷が、文書館や図書館でのアーカイブ構築活動とどう響き合ってきたかという問題を整理する。その上でデジタルアーカイブの現状を、そうした過去の文脈から断絶・飛躍したものではなく、連続したものとして捉えることを目指す。