日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
輪状咽頭嚥下障害に対するバルーンカテーテル訓練法
―4種類のバルーン法と臨床成績―
北條 京子藤島 一郎大熊 るり小島 千枝子武原 格柴本 勇田中 里美
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1997 年 1 巻 1 号 p. 45-56

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抄録

輪状咽頭嚥下障害による嚥下障害患者に対する嚥下訓練手技としてバルーンカテーテル訓練法(以下バルーン法)がある.これは輪状咽頭筋を中心とした食道入口部の食塊通過障害をバルーンカテーテルを用いて改善する方法であるが,現在具体的な訓練法や症例の報告は少ない.今回,我々は輪状咽頭嚥下障害患者17例に対してバルーン法を行った.バルーンの種類としては,膀胱留置バルーンカテーテルと食道ブジー用バルーンカテーテルの2つを症例に応じて使用した.バルーン法の手技としては,a 球状バルーンによる間欠的拡張法,b 球状バルーンによる嚥下同期バルーン引き抜き法,または単純引き抜き法,c 球状バルーンによるバルーン嚥下法,d 筒状バルーンによる持続拡張法の4種類である.症例は11例が脳幹部梗塞,3例がくも膜下出血術後,1例が頚髄損傷,その他が2例であった. 評価は臨床評価と嚥下造影の所見で行った.17例中バルーン法を中心とした嚥下訓練のみで改善がみられたのは9例,やや改善があったものの誤嚥が改善しなかったのは3例,殆ど改善が得られなかったのは5例であった(当院にて手術は7例に行った).輪状咽頭嚥下障害に対する保存的治療としてバルーン法は有用である.急性期症例だけでなく発症や手術から長期経過した症例であってもバルーン法により改善した症例があり,バルーン法は術後の瘢痕狭窄に対しても効果があることが示唆された.また,バルーン法による訓練期間やバルーンの種類の検討を行ったほか,嚥下造影の咽頭通過の所見から輪状咽頭嚥下障害の分類を考案し考察を加えた.

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© 1997 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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