日本透析医学会雑誌
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原著
単一施設における同種造血幹細胞移植後急性腎不全の解析
安藤 稔中村 裕也鈴木 一恵澁谷 あすか
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2007 年 40 巻 12 号 p. 1045-1050

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抄録

同種造血幹細胞移植は造血系悪性腫瘍の根治療法として画期的なものである. しかしその一方で, 造血幹細胞移植においては細胞毒性の強い抗腫瘍薬や免疫抑制剤を大量に投与しなければならない側面を持ち, それに関わる重篤な副作用や合併症をいかに管理できるかが成功率を決定する. 多くの合併症の中でも移植後急性腎不全 (ARF) は患者の生命予後を左右する最も重要な合併症の一つである. 本論文では, 造血幹細胞移植後ARFの病像の特徴について単一施設でのデータを詳細に検討した. 1998年から2006年の8年間に駒込病院血液内科で施行された成人同種造血幹細胞移植患者402例 (男性239例, 女性163例, 平均年齢39.9±12.5歳) を対象とし, 血液内科のデータベースおよびカルテ内容を中心にして後方視的に解析した. ARFは移植後60日以内に血清Cr値が1.2mg/dL以上または移植前血清Cr値の2倍化以上の持続上昇と定義した. ARF発症率は36/402例 (8.9%), ARF患者の平均年齢は47.4±9.25歳, 平均発症病日は移植後17.1±14.7日, ARF患者死亡率は19/36例 (52.8%) であった. ARF発症リスクと予後に関しては, 移植時年齢と移植時血清Cr値が関係している可能性が示唆された. 原因に関しては多くの例では単一原因を特定することは困難で, ほとんどは薬剤性腎障害, 敗血症を含む感染症, 循環不全, 急性移植片宿主病などの病態が複合的に関係して発症していた. ARF患者の透析療法導入率は9/36例 (25%) であり, 全例多臓器障害を呈し, 8/9例 (89%) が死亡した. 造血幹細胞移植後ARFは約9%の患者にみられ, きわめて死亡率が高い. 特に透析療法が必要とされるARFは多臓器障害であり, 致死的である.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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