日本透析医学会雑誌
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原著
頭打ちになった透析患者の増加傾向
阿岸 鉄三佐藤 敏夫
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2007 年 40 巻 4 号 p. 347-350

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抄録

日本透析医学会は, 毎年末に「わが国の慢性透析療法の現況」を集計し, 発表している. この集計の中で最も基本であり, したがって重要であると考えられる部分は累積慢性透析患者の推移であろう. 患者数の推移については, 過去40年間ほどにわたって直線的な増加を示していると表現されるのが一般的であった. この報告は, 患者数推移の状況を数学的に分析・検討すれば, もはや直線的増加の表現では適切でなく, 増加が頭打ち状況にあることを指摘するものである. 累積患者数 (Y) と年度 (X) の関係を多項式近似式で表すと, 次数=1 (直線) では, R=0.9779であるが, 次数=5では, R=0.9996の高い近似が得られる. この5次多項式近似式の1次微分値, 2次微分値は, それぞれ累積患者数の年次推移速度, および年次推移加速度を表すものと考えられる. これらに現れた数字を検討すると, 1991年に患者数推移の加速度の減少傾向が現れ, 1999年に推移速度は減少し, 加速度は負に転じたことがわかる. その原因は, 1992年に, いわゆる包括化として始まった透析医療に対する保険適用の締め付けにあることが推定される.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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