日本透析医学会雑誌
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原著
透析期間20年以上の長期透析患者における腎癌の臨床病理学的検討
瀬戸口 志保中澤 速和伊藤 文夫鬼塚 史朗近藤 恒徳橋本 恭伸奥田 比佐志瀬戸口 誠田邉 一成東間 紘
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2007 年 40 巻 8 号 p. 643-647

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抄録

今回われわれは, 透析患者に合併した腎癌の病理組織学的特徴を解析し, 長期にわたる透析が腎癌自体および患者の予後にどのように影響しているか検討した. 1982年から2004年の間にわれわれの施設において透析腎癌に対し腎摘除術を施行した192例から, 腎移植術を施行した47例と, 透析期間3年未満の20例を除外し, 計125例を解析の対象とした. 男女比5.5 : 1で, 手術時平均年齢は55.2±10.4歳, 平均透析期間は160.5±95.1か月. 術後の観察期間は中央値59.9か月であった. これらの患者を透析期間が20年以上の長期透析群 (33例) と20年未満の対照群 (92例) に分け臨床病理学的に検討を加えた. 長期透析群の特徴として後天性嚢胞性腎疾患を全例に合併し (p=0.023), 病期分類はhigh stage (Stage III+IV) の症例が10例 (30.3%) と多い傾向を示し, 組織学的異型度ではhigh grade (G3) が7例 (21.1%) と有意に多かった (p=0.01). 予後では, 実測5年生存率は両群に差を認めなかった (長期透析群, 68.2% ; 対照群, 70.4%) が, 癌特異的5年生存率では長期透析群が有意に低かった (長期透析群, 68.2% ; 対照群, 91.9%, p<0.001). 長期透析群の癌特異的5年生存率は実測5年生存率と一致しており, 予後が直接腎癌に依存する結果となった. 多変量解析では, 癌死に対する相対的危険度は長期透析で3.34倍, high gradeで5.14倍, high stageでは16.55倍であり, それぞれ独立した予後因子であることが示された. 今回の結果より, 透析期間が20年以上の長期透析患者は対照群と比較して明らかに予後不良であり, 長期透析が独立した予後因子の1つであることが明らかとなった.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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