日本透析医学会雑誌
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原著
バイパス付き血液回路を用いた新しい返血法の有用性
三輪 真幹太田 昇安藤 知代乃
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キーワード: 返血, 透析, 血液回路, 合理化, 災害
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2008 年 41 巻 1 号 p. 71-76

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抄録

バイパス付き血液回路は,通常の血液回路に血液ポンプをバイパスする回路が付加されていることを特徴とする.バイパス付き血液回路を使用しての返血操作では,人手を要する血液回路のクランプ操作と開放操作とが返血工程初期の短時間に集中している.そして,これらの操作が終了すれば,その後の返血は放置しておいても自然に進行していく.生食ソフトバッグからシャント血管内腔までの落差圧が20mmHg以上の23名の患者を対象にした研究では,透析スタッフが直接操作を行う初期操作時間は26.6±5.2秒であり,返血が自然に進行していくその後の返血工程に要した時間は3.67±0.66分であった.この結果は,バイパス付き血液回路を使用する新しい返血法では,25~30秒間を要する返血工程のいくつかの初期操作が終了すれば,透析スタッフはほかの患者の状態の急変など,緊急事態に対応するために返血中の患者のベッドを離れることも可能になることを示している.また,停電や地震などの災害時にも,バイパス付き血液回路を使用する新しい返血法では,リンス液ラインとの接続部よりも動脈針側の血液回路を充填している16~36mLの血液の損失も受け入れるならひとりの患者につき4~5秒間の操作で30名程度の患者の返血をひとりの透析スタッフが3~4分間で行うことができると計算される.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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