日本透析医学会雑誌
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症例報告
早期胃癌術後10年以上の経過で造骨性骨転移を発症し診断に苦慮した維持透析患者の1例
吉野 純林 雄一郎小西 孝之助熊井 浩一郎辻 美保子門川 俊明林 松彦林 晃一伊藤 裕
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2008 年 41 巻 1 号 p. 81-86

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抄録

早期胃癌術後10年以上の経過で造骨性骨転移を発症し診断に苦慮した維持透析患者の1例を経験したので報告する.症例は1992年から維持透析中の60歳,男性.1993年,早期胃癌にて胃全摘術が施行された.2003年頃より血中ALPの高値を認めたため,2004年骨生検を施行したところ,著明な骨硬化像と,腺癌の骨転移所見を認めた.全身検索が施行されたが原発巣の特定には至らなかった.2005年9月便通異常,腹痛を主訴に入院し,大腸鏡にて転移性直腸癌と診断された.多発性骨転移,腹膜播種の所見もあり根治療法の適応なく,全身衰弱のため12月永眠した.剖検の結果,全身に低分化型腺癌の転移所見が認められ,腺癌の組織学的所見は胃癌に矛盾しなかった.経過としては非典型的だったが,10年以上の経過での胃癌の全身転移と診断された.維持透析患者に造骨性変化を認めた場合,鑑別疾患として腎性骨異栄養症だけでなく骨転移の可能性も考慮する必要がある.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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