日本透析医学会雑誌
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原著
透析患者の敗血症性ショック,透析時低血圧に対する低用量AVP投与の有効性についての検討
中田 夕香子田中 杏川西 智子越川 真男田中 敬雄桑原 隆
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2008 年 41 巻 11 号 p. 779-784

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抄録

カテコラミン抵抗性の敗血症性ショックや心原性ショックのみならず,透析時低血圧においても低用量arginine vasopressin(AVP)持続投与を行うことで循環動態の安定を図ることができるとの報告がある.今回われわれは,敗血症を合併した維持血液透析(hemodialysis:HD)患者5例(男性4例,女性1例,平均67.6歳(55~73歳)),敗血症を合併した慢性腎不全急性増悪のため持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を施行した1例(女性,70歳)および透析時低血圧1例(女性,73歳)における低用量AVP持続投与の有効性について検討した.敗血症合併5例は,透析前よりdopamine(DOA),dobutamine(DOB),noradrenaline(NA)を単独あるいは併用して使用していたが,いずれも昇圧反応に乏しく透析施行不能となった.AVP 1.0~4.0U/h(平均2.2U/h)持続使用により平均47/10mmHgの血圧上昇を認め,またHD中の血圧低下もなく透析施行可能となり,NAのみの併用とすることができた.CHDF例はAVP 2.4U/hとNA 0.3mg/hの投与により昇圧効果を認め,CHDFを4日間施行後離脱し,以降NAのみで血圧維持ができた.透析時低血圧1例(糖尿病)は,メチル硫酸アメジニウムやドロキシドパの内服に反応しなかったが,HD開始時よりAVP 2.5U/hを使用したところショックをおこさず透析施行可能となった.いずれの症例においても副作用を認めなかった.以上より,低用量AVPは敗血症合併時の透析施行や透析時低血圧に有用であった.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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