日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析患者に対する簡便な内因性インスリン分泌能検査法の検討
権藤 麻子松本 博岡田 知也長岡 由女吉野 麻紀外丸 良岩澤 秀明和田 憲和朱 時世林 亜美中尾 俊之
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2008 年 41 巻 3 号 p. 187-193

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抄録

糖尿病性腎症による透析患者は近年増加が著しく,これらの患者の糖代謝動態を把握する上で,内因性インスリン分泌能を評価することは重要である.経静脈内ブドウ糖負荷による急性インスリン分泌反応の測定により,患者自身の内因性インスリン分泌能を評価することはすでに確立された方法であるが,今回われわれはこれを血液透析施行中に行うことで同様に評価可能か否か検討した.血液透析患者19名に対し,非透析日の早朝空腹時に50%ブドウ糖20mLを1分間で静注負荷し,静注前,5分後,15分後の血糖(GLU)と血清インスリン(IRI)およびC-ペプチド(CPR)を測定した.同一患者で血液透析施行中の昼食前,または夕食前に体外循環回路より同様に行い,ブドウ糖負荷前後のGLUとIRIおよびCPRの濃度変化(5′Δ,15′Δ)を両者で比較した.その結果,血液透析施行中検査と非透析日早朝空腹時検査の相関関係は,5′ΔIRI(r=0.952,p<0.0001),15′ΔIRI(r=0.827,p<0.0001),5′ΔCPR(r=0.781,p<0.0001),15′ΔCPR(r=0.725,p<0.001)といずれも良好であり,とりわけ5′ΔIRIが最も強い相関を示した.また,糖尿病透析患者では非糖尿病患者にくらべ,5′ΔIRIは有意に低値であった(p=0.002).以上より,血液透析患者の内因性インスリン分泌能は,透析施行中の簡便な検査で評価可能と考えられる.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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