日本透析医学会雑誌
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症例報告
ポリスチレンスルホン酸カルシウム内服中に直腸穿孔を発症した腹膜透析患者の1例
小林 和裕井上 勉池田 直史鈴木 洋通伴 慎一
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2008 年 41 巻 3 号 p. 199-205

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抄録

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate:CPS)は急性および慢性腎不全による高カリウム血症の治療に用いられる陽イオン交換樹脂の一つである.CPSの副作用としては便秘がよく知られており下剤が併用されることが多い.またソルビトールを懸濁に用いた症例で腸管の潰瘍・壊死・穿孔が報告され添付文書にもソルビトールによる懸濁を行わないことと記載されている.一方でソルビトール不使用例でも腸管穿孔の報告がみられCPS自体の作用も考えられる.今回われわれはループス腎炎から末期腎不全となり腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)施行中の患者で,CPSゼリー内服中に便秘が原因と考えられる直腸穿孔,緊急開腹手術を施行した症例を経験した.病理所見で穿孔部の壊死物質あるいは炎症性滲出物中に好塩基性を呈する多角形状のCPS crystalsが多数認められた.同様のCPS crystalsは穿孔部漿膜側のフィブリン化膿性腹膜炎を呈している部分の炎症性滲出物中にも認められた.穿孔部周囲の大腸粘膜には表層上皮の脱落,陰窩上皮の粘液減少と核の幼若化,萎縮性の陰窩,粘膜固有層の軽度出血などの所見がみられ軽度の虚血性変化を示していた.CPSを使用する際は,特に便秘傾向にある場合腸管穿孔の危険性があることに留意する必要がある.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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