2008 年 41 巻 5 号 p. 305-310
【目的】近年,医療現場においてのinformation technology(IT)化が推進される中,各施設で電子カルテによる患者情報管理,他部門との情報の共有化が行われている.透析医療においても透析管理システムが導入されるようになり,電子カルテと連携し運用している施設も少なくない.当院でも電子カルテと透析管理システムの連携運用を開始した.そこで,本研究では電子カルテと透析管理システム連携の有用性を検討した.【方法】当院血液浄化センターのスタッフ12名を対象とし,電子カルテと透析管理システム連携導入直前には紙運用,導入3か月および12か月後にはコンピューターシステム連携運用の有用性に関するアンケート調査を実施し比較検討した.【結果】電子カルテと透析管理システム連携は,医師からの指示出し・指示受けにおける有効性がシステム導入3か月後では紙運用に比し低いと判断されたが,導入12か月後には紙運用よりも高いと評価された.当センターへの入室前の患者情報把握効率は,導入3か月後では紙運用と差はなかったが,12か月後には評価が高くなった.薬品管理,物品管理,院内他部門との連携における有効性は導入3か月後,12か月後ともに紙運用にくらべ高いと評価された.一方,血液透析終了後の病棟への申し送りにおける有効性は,導入3か月後,12か月後ともに紙運用と差はなかった.【考察】電子カルテと透析管理システムの連携運用は,コンピューター化による利便性のため紙運用にくらべ概ね有効と考えられる.しかし,一方では作業が煩雑となるため操作に慣れるまでに時間がかかるという問題がつきまとう.また,現時点では電子カルテと透析管理システムの連動がスムーズでなく,これらのシステムの改良が望まれる.