日本透析医学会雑誌
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症例報告
摘出腫瘤の病理組織標本所見より頸椎腫瘍状石灰沈着症(cervical tumoral calcinosis)と診断し得た維持透析患者の1例
一色 啓二中澤 純杉本 俊郎坂口 正芳小山 哲朗田中 敬武田 尚子田中 裕紀安田 真子津田 安都子久米 真司金崎 雅美荒木 信一川添 智道時田 由美子中村 紘子前田 憲吾富田 耕彬宇津 貴高橋 忍岡田 裕作
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キーワード: 維持透析, 頸髄症
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2008 年 41 巻 8 号 p. 483-488

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抄録

症例は,67歳の維持透析施行中の男性.5年前に血液透析導入.2年後に関節リウマチ(RA)と診断,プレドニンを経口投与されていた.2006年3月,2週間前から右上肢の脱力が出現し入院となった.画像所見にて,頸部X線で頸椎C5/6間の狭小化,頸部MRIにて頸椎C3/4間に腫瘤を認め,脊髄腫瘍の圧迫による頸髄症と診断し,椎弓形成術および腫瘤切除術を施行した.切除した腫瘤は高度に石灰化しており,病理組織標本にて石灰沈着を伴う異物型巨細胞性肉芽腫形成を認め,頸椎腫瘍状石灰沈着症(cervical tumoral calcinosis)と診断した.本症例は,血清リン(P)濃度や,カルシウム(Ca)・P積,副甲状腺機能が良好にコントロールされていたにもかかわらず,稀な発症部位である頸椎にtumoral calcinosisを認めた.本症例では,頸椎単純X線写真で腫瘤像や石灰化を捉えられず,MRIにても腫瘤は認めるも明らかな石灰化が同定できずに,術中所見と摘出した腫瘤の病理組織所見によりtumoral calcinosisの診断が得られた.維持透析患者の頸髄症の一因としてcervical tumoral calcinosisも考慮する必要があると考え報告する.

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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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