日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
外陰部に非クロストリジウム性ガス壊疽を発症した維持透析患者の1例
石原 知明速見 浩士米澤 智一和田 武子谷口 賢二郎牟田 裕美諸冨 久展中川 昌之
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 41 巻 9 号 p. 635-640

詳細
抄録

症例は68歳,女性.慢性糸球体腎炎による慢性腎不全にて1988年から血液透析が導入された.2005年5月から骨髄異形成症候群に対しステロイドの内服を開始し,二次性の糖尿病を合併していた.2005年9月17日,外陰部に認められた1.5cm大の腫瘤がバルトリン腺炎と診断され,tosufloxacin(TFLX)の内服が開始された.19日からはcefotiam(CTM)の点滴静注に変更されたが炎症所見は増悪し,20日には外陰部に皮下気腫が触知されるようになり,腹部単純X線と腹部・骨盤部CTで皮下にガス像が認められたことから外陰部ガス壊疽と診断され,当院に入院した.局所所見では,左大陰唇に血疱,左鼠径部の広範囲に紫斑と黒色壊死組織が認められ,悪臭を伴っていた.また下腹部,腰背部,左大腿部皮膚に握雪感が認められた.入院当日に左鼠径部から下腹部にかけて切開排膿とデブリドマンが施行された.起炎菌としてBacteroides属が認められたため非クロストリジウム性ガス壊疽と診断された.術後は,抗生剤投与,生理食塩水による連日の創洗浄,高気圧酸素療法を行い,皮膚欠損部に対して肉芽が形成されるのを待って,2006年1月11日に縫縮術が施行された.維持透析患者に外陰部ガス壊疽の発症は稀であるが,ステロイドの内服や糖尿病などの易感染状態の要素が重なることで重症化することを考慮しなければならない.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top