日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
症例報告
高CRP血症が重要な診断手掛かりとなったCKD患者に合併した無症候性急性大動脈解離の1例
岩崎 昌樹常喜 信彦大塚 健記石川 裕泰伊西 洋二田中 友里杉 薫長谷 弘記
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 42 巻 10 号 p. 785-790

詳細
抄録

【背景】胸背部痛や重要臓器の虚血症状といった典型的な臨床症状を伴う急性大動脈解離(acute aortic dissection:以下AADと略す)は,近年の画像診断の普及によって診断すること自体は比較的容易な疾患である.一方で,その臨床症状の多彩さから非典型例で診断が遅れることはまれではない.【症例】70歳,男性.高血圧性腎硬化症を原因とするCKDステージ5(Cr 9.8 mg/dL)の患者.すでに内シャント造設を終え,待機的に血液透析導入予定であった.定期外来受診時,白血球上昇を伴わないC反応性蛋白(C-reactive protein以下CRP)の上昇(19.0 mg/dL)を認めたが,自覚症状は全くなかった.高CRP血症の精査を目的として入院となった.入院時の胸部単純X線検査でごくわずかに左肋横隔膜角が鈍であったため,原因精査目的に胸部造影CTを施行したところ,stanford B型(DeBakeyIIIa型)大動脈解離を認めた.入院後,自然経過でCRPは低下した.その他,各種培養など高CRP血症の原因精査を行ったが,有意なものはなく,CRPの上昇はAADに伴うものと考えられた.【まとめ】AADや大動脈瘤破裂に代表される大血管の疾患では炎症反応の上昇がみられる.腎不全患者は心血管イベントのハイリスク患者群であり,原因不明のCRP上昇を認めた場合,常に重篤な血管病変を意識して診療にあたる必要があるとの教訓を得た.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top