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日本透析医学会雑誌
Vol. 42 (2009) No. 11 P 905-910

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http://doi.org/10.4009/jsdt.42.905

症例報告

クローン病は,比較的若年に好発する腸管全層の炎症を主体とする疾患で,腹痛・下痢・下血などの症状が緩解と再燃を繰り返す慢性非特異性炎症性疾患である.今回われわれはクローン病の初発から40年を経過したのち再燃をおこし,mesalazineおよびprednisoloneの投与にもかかわらず頻回の下血を繰り返した症例に対して,infliximabの投与を試みた透析施行症例を経験した.症例は69歳,男性.25歳時よりクローン病と診断され5~6年の間に計5回の手術歴がある.その後消化器症状はみられず,2005年,慢性腎不全によるうっ血性心不全のため透析導入となった.当院に転院後約3年間著変なく週3回の維持透析を施行していた.今回,配偶者の突然死の4日後に突然の大量下血をおこした.大腸内視鏡所見より縦走潰瘍およびアフタが多発しておりクローン病の再発と診断された.当初mesalazine 1,500mg/日の投与および栄養療法を行ったが効果はみられなかった.次に,prednisolone 30mg/日を併用したが,下痢・下血が連日みられ,頻回の輸血が必要となったことよりinfliximabの投与を行った.初回および2週目と2度のinfliximabの点滴治療を行ったがinfusion reactionはみられなかった.一方,2度目の投与2週間後にニューモシスチス肺炎の合併が認められ,ステロイドパルス療法およびST合剤にての加療を要した.そのため現在,2度のinfliximabの投与にて経過観察しているが,再発後約6か月を経過した後もクローン病の再燃はみられていない.抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体infliximabは当初慢性関節リウマチの治療薬として開発されたが,クローン病およびベーチェット病でもその効果が期待されている.今回の症例においては,治療中にニューモシスチス肺炎の合併を認めたが,クローン病に対してのinfliximabの効果は認められており,特に感染症の合併に注意しながら使用することが有効であると考えられた.

Copyright © 2009 社団法人 日本透析医学会

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